この記事でわかること・結論
- 賞与は固定給与とは別に支給される報酬であり、源泉所得税や社会保険料がかかる
- 住民税の特別徴収は毎月の給与から天引きされる制度なため、賞与から住民税は天引きされない
- 賞与の源泉所得税は、通常時・前月給与の10倍を超えて支給される時・前月給与がない時など計算方法が異なる
この記事でわかること・結論
給与と同様に、賞与(ボーナス)においても所得税や社会保険料がかかります。会社員の場合、従業員の代わりに企業が国に納税するため、企業の担当者は正確に計算をおこなわなければいけません。
そこで本記事では、賞与から天引きされる源泉所得税や保険料の種類についてのおさらい、そして賞与にかかる源泉所得税の計算方法について解説します。
目次
毎月の給与から各種税金や社会保険料が天引きされているのと同様に、賞与(ボーナス)についても源泉所得税や社会保険料がかかります。そのため賞与にも額面と手取りが存在します。
しかし、源泉所得税や社会保険料の計算は給与とは異なり別途算出する必要があるため、本記事で後述している計算方法をよく確認しておきましょう。
夏・冬のボーナスなどでおなじみの賞与は、業績などに応じて毎月の固定給与とは別で支給されます。支給される額は「基本給 × 数カ月分」としている会社がほとんどです。
一般的には、民間企業であれば6月下旬〜7月上旬および12月上旬など年2回賞与が支給されます。ちなみに公務員の場合は、人事院規則によって賞与額や支給日が決まるため民間企業とは異なります。
詳しくは以下の記事をチェックしてみてください。
ボーナスとして賞与が支給される際、どんな種類の税金や保険料が差し引かれているのでしょうか。所得税のほかにも差し引かれるものをまとめて確認しておきましょう。
上記のように、ほとんどが毎月の固定給与と同じように各種計算して差し引かれます。毎月の固定給与と異なる点は、住民税は賞与から差し引かれないという点です。
給与所得者の場合、6月から翌年5月までの毎月の給料から住民税が特別徴収されます。この特別徴収制度は、給与支払者である企業が納税義務がある従業員に代わって、住民税を納めます。毎月の給与から徴収する制度なため、賞与から住民税は差し引かれません。
賞与にかかる源泉所得税の計算方法は、以下のパターンがあります。
それぞれ計算式などが異なるためよく理解しておきましょう。
まずは継続的に雇用されている従業員が賞与をもらう、通常パターンの計算方法を解説します。以下が賞与にかかる源泉所得税の計算式です。
賞与から、賞与額面や標準賞与額などをもとに計算された各種社会保険料を控除した額に、源泉徴収税率をかけ算して算出します。
源泉徴収税率は「社会保険料などを控除したあとの前月の給与」と「扶養人数」によって個人差があるものです。各種金額と扶養人数に応じた税率は、国税庁が公表している「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて計算します。
算出表のなかで「甲・乙」がありますが、給与所得者の扶養控除等申告書を提出している従業員分は甲、提出していない従業員分は乙の欄を用いて計算します。
上記より税率を求めて、社会保険料を差し引いた賞与にかけることで源泉所得税が算出できます。
賞与の通常支給時における源泉所得税について、実際に具体的な数字の例を用いて計算してみましょう。今回は以下の例でおこないます。
賞与 | 300,000円 |
---|---|
社会保険料 | 40,000円 |
前月の給与 | 250,000円 |
前月の社会保険料 | 50,000円 |
扶養人数 | 3人 |
扶養控除等申告書 | 提出済み |
まずは前月の給与および社会保険料をもとに、源泉徴収税率を確認します。
前月の給与から前月の社会保険料を差し引いた金額は200,000円、そして扶養人数が3人であるため国税庁の算出表から源泉徴収税率は「2.042%」ということがわかります。
そして、賞与から社会保険料を差し引いた金額である260,000円に2.042%をかけ算して算出された「260,000円 × 2.042% = 5,309円」が賞与にかかる源泉所得税となります。
賞与が前月給与の10倍を超える場合には通常時とは異なり、以下の流れで源泉所得税を算出します。この場合の10倍とは、社会保険料を差し引いた前月の給与から社会保険料を差し引いた賞与の差を指します。
10倍を超える場合の計算の流れ
上記が計算の流れです。通常時とは異なり、今回の税率は国税庁の「給与所得の源泉徴収税額表」を利用するため間違えないように注意しましょう。
賞与が前月給与の10倍を超える場合のケースについて、具体的な数字を用いて計算してみましょう。今回はわかりやすくするために、あらかじめ社会保険料控除後の金額を前提としています。
社会保険料控除済みの賞与 | 2,400,000円 (6カ月の計算期間) |
---|---|
社会保険料控除済みの前月給与 | 210,000円 |
扶養人数 | 3人 |
扶養控除等申告書 | 提出済み |
まずは、給与所得の源泉徴収税額表を用意します。賞与を計算期間で割った400,000円と前月給与の210,000円を足した「610,000円」、そして扶養人数3人の甲欄を照らし合わせて税額である「29,350円」を確認します。
次に、前月給与210,000円そして扶養人数3人に対する税額である「280円」を確認したのち、先ほどの税額から差し引いて「29,350円 − 280円 = 29,070円」を算出します。
算出した金額に、今回の計算期間6カ月分を掛け算して求められる「29,070円 × 6カ月 = 174,420円」が源泉所得税となります。
最後は、前月給与の支払いがない場合の賞与についてです。源泉所得税の計算式は以下となります。
このパターンにおける、賞与の源泉所得税計算はシンプルです。10倍を超える場合と同様に「給与所得の源泉徴収税額表」をもとに算出しましょう。
毎月の給与や賞与および、そこにかかる各種税金や保険料の計算を従業員分おこなうのはとても大変です。
毎年、毎月と変更のない数値項目があったとしても毎回丁寧に計算する必要があります。そこでおすすめなのが「給与計算システム」の導入です。
給与計算システムでは従業員情報などを一度入力しておけば、給与や賞与そして税金や保険料などを自動で計算してくれます。従業員が多数所属している場合でもスムーズに対応可能です。毎年の変更点(法改正や社内での変更)などにも臨機応変に対応できます。
また、データとして安心安全に保管するため個人情報の扱いも問題ありません。役所への提出も自動計算したデータをそのまま活用して電子申告が可能であるため、大幅な業務効率化が見込めます。
年末調整や新年度時などにも役立つでしょう。計算業務で課題がある企業さま・担当者さまはぜひ検討してみてください。
賞与にも源泉所得税がかかりますが、給与とは異なる計算方法で算出するため混同しないように注意が必要です。また、住民税は差し引かれないというポイントも覚えておきたいところです。
実際に計算する際は前月の給与支払いがあるかどうかや、前月給与と比べて賞与が10倍を超える支払いであるかどうかなど、状況によって計算方法および参考にする国税庁の表が異なります。
各種計算方法を覚えることも大切ですが、正確かつ迅速に計算をおこなうために「給与計算システム」を導入して、組織全体の業務効率化を図ることもがおすすめです。
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