パートタイム・アルバイト従業員における社会保険(厚生年金・健康保険)の適用範囲の拡大は、これまで段階的におこなわれており、2024年にもさらなる適用範囲の拡大が予定されています。
この記事では、2024年時点で社会保険の加入対象となるパートタイム・アルバイト従業員の条件について解説。そして2024年の適用範囲拡大に備えて、新たに加入対象となるパートタイム・アルバイト従業員の条件も確認していきましょう。
社会保険に加入するメリットなども紹介するため「社会保険に加入したくない」と考えている方も、ぜひ一読してみてください。
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目次
2024年2月時点では、以下のすべての条件を満たしたパートタイム・アルバイト従業員は、社会保険の加入対象者となります。これは2022年10月におこなわれた法改正に基づいています。
対象企業 | 厚生年金保険などの被保険者が101人以上の企業(特定適用事業所) |
---|---|
適用対象となる 短時間労働者の要件 |
・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満 所定労働時間が40時間の企業の場合 ・月額賃金が88,000円以上 ・2カ月を超える雇用の見込みがある ・学生ではない |
先述したとおり、現在の社会保険の加入条件は2022年10月からの法改正にもとづいています。しかし2024年10月から、社会保険の適用範囲がさらに拡大されることが決まっており、従業員51人以上の企業で働くパート・アルバイトも新たに加入対象となります。
適用開始時期 | 2022年10月~ | 2024年10月~ |
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従業員規模 | 101人以上 | 51人以上 |
週の所定労働時間 | 20時間以上30時間未満 | |
雇用期間 | 2カ月を超える 雇用の見込みがある |
|
月額賃金額 | 88,000円以上 | |
そのほか | 学生でないこと |
弊サイトでは2024年10月の社会保険の適用拡大に伴い、新たに社会保険の対象となった企業が、適用拡大について社内に周知するために使える無料テンプレートを公開しています。
Word形式なので自由に編集することが可能です。必要に応じて下記からダウンロードの上、ご利用ください。
このように社会保険の適用範囲は段階的に広くなっており、同時に社会保険の加入義務が発生するパート・アルバイト従業員も徐々に増えています。社会保険の適用範囲の拡大は、2016年10月からはじまりました。ここからは、これまでの改正内容を振り返ってみましょう。
2016年10月より、勤務先が特定適用事業所に指定されていて、下記のすべての加入条件に当てはまれば、これまで社会保険に加入できなかった短時間労働者(パートタイム・アルバイト従業員)も加入できるようになりました。
対象企業 | 厚生年金保険などの被保険者が501人以上の企業(特定適用事業所) |
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適用対象となる 短時間労働者の要件 |
・週の所定労働時間が20時間以上 ・賃金の月額が88,000円以上 ・1年を超える雇用の見込みがある ・学生ではない |
2016年9月までは、正社員の4分の3以上働くパートタイム・アルバイト従業員のみ、社会保険の加入義務がありました。それが2016年10月の適用範囲の拡大により、多くの短時間労働者も社会保険に加入ができるようになったのです。
2017年4月におこなわれた法改正では、短時間労働者の条件はほぼ変わらず、社会保険が適用される事業所の条件が拡大しました。
対象企業 | ・厚生年金保険などの被保険者が500人以下の企業 ・労使合意に基づき申出をする法人や個人の事業所 ・地方公共団体に属する事業所 |
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適用対象となる 短時間労働者の要件 |
・週の所定労働時間が20時間以上 ・賃金の月額が88,000円以上 ・1年を超える雇用の見込みがある ・学生ではない |
500人以下の企業は、労使の合意に基づいて厚生年金保険・健康保険の適用拡大をするという申出の手続きが必要です。
地方公共団体に属する事業所の場合は、短時間労働者に関する以下の書類を提出すれば社会保険が適用されるようになります。
次に、社会保険の適用範囲の基準となる従業員数のカウント方法とタイミングについて解説します。
従業員数とは、現在の社会保険の適用対象者数であり「フルタイムの従業員数」と「週労働時間がフルタイムの4分の3以上の従業員数」の合計です。
従業員数にはパート・アルバイト従業員も含まれますが、社会保険の適用条件を満たさない場合はカウントされません。
社会保険の加入対象となる従業員数をカウントする時期は、従業員数(厚生年金保険の適用対象者数)が「直近12カ月のうち6カ月で基準を上回った段階」です。
社会保険料は負担が大きいため「加入したくない」「106万の壁・130万の壁を超えたくない」「扶養内で働きたい」と考えるパート・アルバイト従業員も多くいるでしょう。
しかし、社会保険に加入することで得られるメリットもあります。ここからは、社会保険に加入するメリットついて解説します。
従業員として社会保険に加入する場合、企業が健康保険料と厚生年金保険料を原則として折半するため、従業員は本来支払うべき保険料の半額の負担で済みます。一方、個人事業主などの自営業者は企業からの補助がなく、全額自己負担しなければなりません。
老後の厚生年金保険について、1階(基礎年金部分)に加えて2階(報酬比例部分)が上乗せされるため、将来の年金受給額が増えるというメリットがあります。
社会保険に加入すると傷病手当金は病休期間中給与の3分の2相当、出産手当金は産休期間中給与の3分の2相当支給されるなど、充実した保険制度が受けられることもメリットです。
最後にパートタイム・アルバイト従業員の社会保険加入に関し、よくある質問について紹介します。
2024年現在、パートタイムやアルバイトであっても社会保険の加入条件に当てはまる従業員は多くいます。2024年10月にはさらに加入対象者が増えることが予想されますので、人事・労務担当者は早めに準備をしておきましょう。
また社会保険に加入すると、毎月の給与から社会保険料が天引きされるため「加入したくない」と考える方も多くいるようです。しかし社会保険は、加入すると老後の年金受給額が増えたり、充実した保険制度を受けられるメリットがありますので、従業員はよく説明をしましょう。
大学卒業後、日本通運株式会社にて30年間勤続後、社会保険労務士として独立。えがお社労士オフィスおよび合同会社油原コンサルティングの代表。
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