新型コロナウイルス感染症拡大防止や働き方改革をきっかけに、在宅勤務などテレワークを導入する企業が増えています。
テレワークとはtele(離れて)work(勤務をする)という意味で、在宅勤務(自宅で仕事をする)・モバイルワーク(交通機関の社内やカフェなどで仕事をする)・サテライトオフィス勤務(遠隔勤務用の施設で使途をする)の3つの種類があります。
2020年4月7日(火)に緊急事態宣言が発令された際の働き方において、このようなテレワークの重要性が高まりました。
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柔軟な働き方や生産性向上に効果的といわれる在宅勤務などテレワークを導入するためには、労務に関わる課題を解決する必要があります。
テレワークの実施は働き方のルールが必要となるため、就業規則の改定が必要です。主に改定する項目は以下の通りです。
上記に加えて通常勤務とは異なる労働条件(休憩や家事などの離席が許される場合)を設定したり、「事業場外のみなし労働時間制」などの特別な労働時間制を導入したりする場合にも就業規則の改定が必要です。
また、テレワークにかかる費用負担(通信回線使用料、電話料金、文具・備品、カフェ・シェアオフィスの利用料等)も就業規則に入れましょう。
テレワークでも雇用契約の内容や労務管理のルールは変わらないため、労働時間の管理は必要となります。また、管理監督者でない従業員には実働時間に応じた時間外手当(残業代)を支払います。
このように、テレワークであっても労働時間を正確に把握することが必要ですから、タイムカードやオフラインの打刻機を使用している場合は、オンラインの勤怠管理システムの導入を検討しましょう。
テレワークは、出社をせずに自宅等で業務を行うので、従業員に「有給休暇を取得しづらい」という心理的効果が働く可能性があります。この点また、2019年4月より10日以上の有給休暇を与えられる労働者すべてに、年5日間の有給休暇を確実に取得させることが義務化されました。そこで企業は、テレワーク勤務を行う従業員についても、有給休暇の取得状況も正確に把握する必要があります。
テレワークの途中で仕事を中断して「お迎え」に行き、中断した時間分終業時刻を後ろにずらすなど、より柔軟な働き方ができるようにフレックスタイム制の導入も一緒に検討されると良いでしょう。
テレワーク体制を確立するためには、人事評価制度と新たな福利厚生度の拡充が必要です。
現在の日本企業は、メンバーシップ型の働き方が主流であり、役割や職務が明確に分けられた評価制度になっていません。定量的な評価よりも「頑張っている」、「ムードメーカーである」などの定性的な評価が一般的となっています。
しかし、テレワークでは従業員の働きぶりを直接確認できないため、アウトプットのみで評価することになりがちです。そうなると、テレワークを行う従業員は「人事評価の上で不利に扱われるのではないか?」との不安を抱くことになります。
このような懸念を払拭するために、従業員の役割・職務および期待成果を明確にするとともに、WEB・TV会議、チャット、メール、音声・ビデオ通話等を積極的に活用することによって日々の業務の成果や進捗状況を把握し、公正な人事評価を行う必要があります。
テレワークは柔軟な働き方を促進する一方で、腰痛や運動不足による健康問題が発生しやすいと考えられます。
テレワークでは、必然的に従業員の金銭的・身体的負担を増やしてしまいます。また、書斎のような自宅での作業環境がない従業員も多く、生産性の低下や健康面での悪影響が出る可能性があります。
そのため、健康を維持するための福利厚生の充実が望ましいといえます。
在宅勤務などテレワークでは、会議もコミュニケーションもITツールを利用することとなります。そのため、今まで使用していた紙による資料は電子化されます。そのほか、出社する回数も減るため、紙面による給与明細や各種申請もWebに移行することとなります。
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社会保険労務士の中でも、10%に満たないと言われる助成金を専門に手掛ける特定社会保険労務士/ワークスタイルコーディネーター。なんば社会保険労務士事務所の所長。
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