事業主の名称や事業所の名称、また会社移転による所在地などに変更が生じた場合の手続きについて、しっかりと確認はできているでしょうか。事業主は加入している保険ごとにそれぞれ必要な届出を行わなければなりません。
たとえば、労働保険や社会保険についても「保険」ですので、変更があった場合には決められた提出期限までに変更の手続きを行う必要があります。今回は、労働保険と社会保険の変更手続きについて解説します。それぞれに必要な届出を確認しておきましょう。
やまもと社会保険労務士事務所 所長 特定社会保険労務士
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大学卒業後、自動車メーカー系システム開発会社に技術職として入社し、プログラマ、SEとして職務に従事。その後、上場の建設会社に転職。
情報システムの開発、運用、管理を経験した後、人事部に異動して給与計算、社会保険手続きから採用・退職など、人事労務管理に約12年従事。
事業主は、事業主自身の名称や事業所の名称、所在地などに変更が生じた場合には、法定で決められた届出を行う必要があります。従業員の給与や福利厚生に関連する内容として、特に雇用保険、そして年金に関する手続きは忘れずに行いたいものです。
これらの各保険の変更手続きは、各内容によって管轄となる部署が異なります。そのため、それぞれに対して正しい書類を提出しなければなりません。変更の事実が生じてから、これらの手続きを行う期間についても定められていますので、事業主は十分に留意する必要があります。
また、手続きは原則として事業主が行うものですが、業務の合間を縫っての手続きが難しい場合も多々あるかと思います。そのようなときは、社会保険労務士による代理での手続きも可能ですが、事業主たるもの、正しい手続きのステップについては把握しておきたいものです。ここで後述の手続きについて、しっかりと確認をしておきましょう。
まず、会社名の変更などが生じた場合の雇用保険の手続きには、「労働保険名称、所在地等変更届」の提出が必要になります。こちらは変更のあった日の翌日から10日以内が期限となっており、「労働保険名称、所在地等変更届」を管轄の労働基準監督署または公共職業安定所(以下:ハローワーク)に提出します。
また、あわせて「雇用保険事業主事業所各種変更届」を事業所の所在地を管轄するハローワークへ提出する必要もあります。また、この手続きについては会社が一元適用事業であるか、二元適用事業であるかで提出方法が異なります。これについての詳細は、「会社変更や移転時に必要な「労働保険名称、所在地変更届」とは?」の記事をご参考ください。
社会保険の手続きには年金事務所への届出が必要になります。ですが、事業所の移転に伴う届出を行うケースでは、この移動により管轄の年金事務所が変更になるか否かで提出先が異なります。変更後も同一の管轄内の年金事務所である場合は、「適用事業所所在地・名称変更(訂正)届(管轄内)」を事実発生から5日以内に管轄の年金事務所へ提出し、手続きを行います。
一方で管轄が変わる場合には、「適用事業所所在地・名称変更(訂正)届(管轄外)」を移転日から5日以内に移転前の管轄の年金事務所へ提出し、手続きを行います。届出に必要な書類がケースにより違いますので、よく気を配っておきましょう。また、郵送ではなく窓口持参で手続きする場合は手続きに訪れる時期などにも注意する必要があるでしょう。
原則として年末年始の対応は難しいのが一般的なようです。業務の合間に手続きを行う事業主も多いかと思いますが、よりスムーズに手続きを済ませるためにも、特に忙しい時期に行うのであれば、あらかじめチェックしておくと良いですね。
事業主が多忙な業務の合間を縫って手続きを行うのは大変と考える方もいるでしょう。届出を提出する手間を少しでも省きたいときには、「電子申請」の利用をおすすめします。
電子申請による手続きは、インターネットに接続できる環境さえ整っていれば、時間を問わず手続きをすることが可能ですので、時間短縮に繋がり、便利に活用することができます。
さらに、前年度の申請情報を取り込むことができるサービス等もあり、次の年度からは修正程度の手間で済ませることが可能になることや、データで手続きをすることにより、チェックも漏れなく行ってくれるという点も嬉しいポイントとして挙げられます。また、多忙である場合は先に述べた社会保険労務士の代理での手続きも検討すると良いでしょう。
電子申請の利用ですが、書面での手続きにおける「印鑑証明書」に相当する、「電子証明書」の取得が必要となります。電子証明書は「認定局」と呼ばれる発行機関から取得できますので、忘れずに確認をしましょう。
また、事業主ではなく社会保険労務士による代理の手続きを行う場合には、申請者と社会保険労務士の電子署名を付与する必要があります。また、申請データの送付には容量の制限がありますので、送信前にデータの重複などで余計な容量が付加されていないかどうかについても、しっかりと確認しておきたいですね。
会社名や代表者、事業所の所在地などの変更には、必ず手続きが必要になってきます。事業を続けていれば規模の拡大や事業内容の変更などにより、ときにはさまざまな部分の見直しが迫られるものです。
その都度きちんと正式な手続きを踏み、会社として正しく届出を行いたいものです。しかし、そんなときにどうしても時間が取れないというケースもあるかもしれません。このとき、ご紹介した電子申請システムを賢く活用することで、間違いがなく、なおかつ簡単に手続きが行える方法があることを知っておくと良いでしょう。