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2025年(令和7年)から始まる助成金・補助金【中小企業向け】雇用関係助成金の改正点も紹介

2025年から始まる補助金とは【中小企業向け】雇用関係助成金の改正点も紹介

監修者:労務SEARCH 編集部
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2025年は、事業を取り巻く環境が大きく変化するなかで、事業の成長や雇用環境の整備を後押しする補助金・助成金制度が多数用意されています。

特に、新たな制度のスタートや既存制度の変更点が多く、これらの情報をいち早く掴むことが、事業戦略を立てるうえで非常に重要となります。

そこで本記事では、2025年に特に注目すべき主要な補助金・助成金制度をピックアップし、その概要から具体的な変更点、対象となる取り組み、活用イメージまでをわかりやすく解説します。

2025年に新設される助成金・補助金一覧

2025年に公募が実施される雇用関係の助成金・補助金のなかで注目は、主要な補助金のひとつだった「事業再構築補助金」が廃止される一方で、中小企業を支援するための新たな補助金である「中小企業新事業進出補助金」と「中小企業成長加速化補助金」がスタートすることです。

中小企業新事業進出補助金

2025年から新たに始まる中小企業新事業進出補助金は、新たな事業分野への進出を目指す中小企業を支援することを目的としています。

2024年まで実施されていた「事業再構築補助金」の後継となる制度と位置付けられており、新規事業への進出を通じて企業規模の拡大を目指す中小企業にとって、非常に汎用性の高い補助金と言えるでしょう。

特徴は補助対象経費の範囲の広さ

この補助金の大きな特徴は、補助対象経費の範囲が幅広いことです。設備投資はもちろん、外部専門家の活用にかかる経費も補助対象に含まれます。

なお、ここで言う「新事業進出」とは、新事業進出指針に示す「新事業進出」の定義に該当する事業である必要があります。

補助対象者 企業の成長・拡大に向け、新規事業への挑戦をおこなう中小企業など
補助上限額 従業員数に応じて補助上限額が異なります。
従業員数20人以下:2,500万円
従業員数21~50人:4,000万円
従業員数51~100人:5,500万円
従業員数101人以上:7,000万円
補助下限750万円
大幅賃上げ特例適用事業者の場合、補助上限額を上乗せ
補助率 2分の1
補助対象経費
  • 建物費
  • 構築物費
  • 機械装置・システム構築費
  • 技術導入費
  • 専門家経費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費
  • 広告宣伝・販売促進費

中小企業新事業進出補助金の活用例

中小企業新事業進出補助金の活用例としては、以下のようなものがあります。

活用イメージ

  • 機械加工業でのノウハウを活かして、新たに半導体製造装置部品の製造に挑戦する
  • 医療機器製造の技術を活かして蒸留所を建設し、ウイスキー製造業に進出する

これらの事例からもわかるように、機械装置の導入や新施設の建設など、大規模設備の投入にも活用できる点が特徴です。

公募スケジュール

第1回の公募スケジュール
公募要領公開日 2025年4月22日
募集開始日 2025年6月頃予定
募集締切日 2025年7月10日 18:00

中小企業成長加速化補助金

中小企業成長加速化補助金も、2025年からスタートする新しい補助金制度です。この補助金は、売上高100億円への飛躍的な成長を目指す、特に成長志向型の中小企業を対象としています。工場の新設や、ソフトウェア導入による業務の自動化など、大胆な設備投資に活用できる補助金です。

補助対象者 売上高100億円への飛躍的な成長を目指す中小企業
補助上限額 最大5億円
補助率 2分の1以内
補助対象経費
  • 建物費
  • 機械装置等費
  • ソフトウェア費
  • 外注費
  • 専門家経費

中小企業成長加速化補助金の申請要件

中小企業成長加速化補助金には、申請時にいくつかの要件満たさなければなりません。

申請要件
  • 投資額1億円以上(外注費や専門家経費を除く)
  • 100億宣言がポータルサイトに公表がされていること
  • 賃上げ要件を含む要件の達成

「100億宣言」とは、成長目標や具体的な取り組みを明記した宣言のことです。これを100億企業成長ポータルサイトに公表することが、要件のひとつとなっています。この宣言を通じて、経営者ネットワークへの参加や宣言マークを活用した自社PR効果も期待できるとされています。

中小企業成長加速化補助金の活用例

中小企業成長加速化補助金の活用例としては、以下のようなものがあります。

活用イメージ

  • 工場や物流拠点などの新設、増築
  • イノベーション創出に向けた設備導入
  • 自動化による革新的な生産性向上

最大5億円の補助上限額を活用し、大規模な設備投資によって事業を大きく成長させたい中小企業にとっては、有力な補助金となるでしょう。

公募スケジュール

1次公募の要領は、2025年3月14日に公開されました。申請するには、同年6月9日の17:00までに100億宣言の申請がおこなわれていることが必須となります。

1次公募
公募要領公開日 2025年3月14日
募集開始日 2025年5月8日 16:00
募集締切日 2025年6月9日 17:00
事業終了期限 2029年3月31日 23:59

2025年に改正がある既存の助成金・補助金一覧

既存の助成金・補助金においても、時代のニーズに合わせて対象範囲や要件、助成(補助)額などが見直されています。

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が生産性向上を目指して、新製品や新サービスの開発をおこなうことを支援する補助金です。2025年においては、いくつかの変更点があります。

改正点
  • 「省力化(オーダーメイド)枠」の廃止
  • 「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」という2つの申請枠が新設
  • 「最低賃金引き上げ特例」の新設
    →大幅な賃上げに取り組む事業者は補助率が2分の1から3分の2に引き上げ
  • 収益納付義務の撤廃さ

製品・サービス高付加価値化枠

補助対象者 革新的な新製品・新サービス開発による高付加価値化を目指す中小企業
補助上限額 750万円~2,500万円
大幅な賃上げに取り組む事業者を対象とした補助上限額の上乗せあり
補助率 中小企業:2分の1
小規模・再生事業者:3分の2
最低賃金の引き上げに取り組む事業者を対象とした補助率の引き上げあり

補助対象経費は、機械装置・システム構築費が必須経費となるほか、以下の経費などが対象となります。

補助対象経費
  • 技術導入費
  • 専門家経費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用費
  • 原材料費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費

活用事例は、最新複合加工機による精密加工技術を導入し、高付加価値な製品を開発するなどが考えられます。

グローバル枠

補助対象者 海外事業の実施による国内の生産性向上を目指す中小企業
補助上限額 3,000万円
大幅な賃上げに取り組む事業者を対象とした補助上限額の上乗せあり
補助率 中小企業:2分の1
小規模・再生事業者:3分の2
最低賃金の引き上げに取り組む事業者を対象とした補助率の引き上げあり

補助対象経費は、製品・サービス高付加価値化枠同様に機械装置・システム構築費が必須経費となるほか、製品・サービス高付加価値化枠の経費に加えて、海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費などが対象となります。

活用事例としては、海外市場獲得を目的とした製造機械を導入するとともに、開発した新製品を海外展示会へ出展するなどが考えられます。グローバル枠では広告宣伝・販売促進費も対象となるため、海外展示会を活用した市場獲得に有効です。

公募スケジュール

ものづくり補助金には公募回が複数あります。20次の公募スケジュールは以下のとおりです。

20次の公募スケジュール
公募要領公開日 2025年4月25日
申請開始日 2025年7月1日 17:00
申請締切日 2025年7月25日 17:00

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、従業員数の少ない小規模事業者が、作成した経営計画に基づき実施する販路開拓などの取り組みを支援する補助金です。新たな顧客獲得や、新しい市場に進出するための取り組みなどが主な対象となります。

2025年の変更点

2025年には「卒業枠」「後継者支援枠」といった従来の枠が廃止される一方で、新たに「創業型」「共同・協業型」「ビジネスコミュニティ型」という3つの新しい類型が創設されています。

また、2025年は補助金の「政策の原点回帰」が掲げられており、申請時に提出する経営計画の内容が重点的に確認される可能性が高いとされています。

創業型
補助対象者 産業競争力強化法(産競法)に基づき、「認定市区町村による特定創業支援等事業の支援」を受けた小規模事業者
補助上限額 200万円
インボイス特例による補助上限額の上乗せあり
補助率 3分の2
対象経費 販路開拓などにかかる幅広い経費(通常枠と同様)
共同・協業型
補助対象者 地域に根ざした企業の販路開拓を支援する機関(地域振興等機関)が中心となり、10以上の小規模事業者が連携して販路開拓に取り組むケース
補助上限額 5,000万円
補助率 地域振興等機関にかかる経費は定額、参画事業者にかかる経費は3分の2
対象経費 地域振興等機関は人件費、旅費、委託・外注費など
参画事業者は旅費、設営・設計費、広報費など
ビジネスコミュニティ型
補助対象者 商工会・商工会議所の内部組織など(青年部、女性部など)
補助上限額 50万円
2以上の補助対象者が共同で実施する場合は100万円に引き上げられます
補助率 定額
対象経費 専門家謝金、専門家旅費、旅費、資料作成費、借料、雑役務費、広報費、委託費.

小規模事業者持続化補助金の活用例は下記のとおりです。

活用イメージ

  • フードプリンターを導入し、他店との差別化や新規顧客獲得を目指す
  • 出張理容サービスを開始し、広告宣伝を通じて新規顧客を獲得する
  • 最新トレーニング機器を導入し、新規メニューを開発することで新規顧客を獲得する

新規顧客や新規市場の開拓を目的とした機器導入や、サービス展開に必要な経費を幅広く補助しているのが特徴です。採択率を高めたい場合は、中小企業診断士などの専門家への相談も検討すると良いでしょう。

IT導入補助金

IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者が、業務効率化や売上向上を図るためにITツールを導入する費用を支援する補助金です。

特に、2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応したITツールの導入費用も対象経費となっており、インボイス制度への対応に課題を感じている個人事業主や小規模事業者にとって、非常に役立つ制度と言えます。

特定のツールのみが補助の対象

なお、補助対象となるITツールは、事務局があらかじめ登録した特定のツールのみである点に注意が必要です。

2025年の変更点

2025年より、補助対象経費が拡大されました。ITツールの導入費用だけでなく、導入関連費として保守サポート費用やマニュアル作成費用、導入後の活用支援に関わる費用なども対象経費となりました。

また「通常枠」では、地域の最低賃金近傍の事業者に対して補助率の引き上げがおこなわれており、業務効率化を通じて賃上げを目指す中小企業にとって、昨年度以上に使いやすくなっています。

通常枠
補助対象者 あらかじめ事務局に登録されたITツールを導入し、業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中小企業・小規模事業者など
補助上限額 5~450万円
補助上限額は、導入するITツールの業務プロセスに応じて変動します
補助率 中小企業:2分の1
地域の最低賃金近傍の事業者:3分の2
対象経費 ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費
2025年より拡大

さらに「セキュリティ対策推進枠」に関しても、補助内容が見直され、補助上限額の引き上げや、小規模事業者の補助率引き上げが実施されています。

セキュリティ対策推進枠
補助対象者 サイバーセキュリティ対策を進める中小企業・小規模事業者
補助上限額 5~150万円
補助率 大企業:2分の1
中小企業:3分の2
対象経費 特定の「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の利用料(最大2年分)

補助対象となるサービスは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開しているリストに掲載されたサービスに限られます。IT導入補助金の公式サイトでは、以下のような活用事例が紹介されています。

活用イメージ

  • セルフオーダーシステムを導入し、人手不足を解消しつつ回転率を向上させるケース
  • オンライン予約システムを導入し、新たなオンラインサービスの提供を開始するケース
  • CADソフトを導入し、設計業務の効率化を図るケース

事務局が登録したITツールに限られますが、その種類は多岐にわたるため、飲食業、サービス業、製造業など、幅広い業種で活用できる補助金と言えるでしょう。

省力化投資補助金

省力化投資補助金は、労働力不足の解決を目的とした省力化設備の導入を支援する制度です。省力化設備を導入することで、企業の付加価値額や生産性の向上が期待され、それによって賃上げにも繋がる効果が見込まれています。

2025年の変更点

あらかじめ定められた製品カタログから選んで申請する「カタログ形式」に加え、2025年より新たに「一般型」が追加されました。これにより、事業者が希望するカスタマイズ機器やソフト+ハードの製品を申請できるようになり、さらなる使い勝手の向上が期待されています。

一般型
補助対象者 人手不足の解消を目的とした設備導入を検討している中小企業・小規模事業者
補助上限額 従業員数に応じて変動します。カタログ注文型よりも高額な上限が設定されています。
5人以下:750万円
6~20人:1,500万円
21~50人:3,000万円
51~100人:5,000万円
101人以上:8,000万円
大幅な賃上げをおこなう場合は、補助上限額の引き上げあり
補助率 2分の1
小規模事業者や再生事業者:3分の2
補助金額に応じて変動します。さらに、賃上げを後押しするための「最低賃金引き上げ特例」による補助率の引き上げがあります。
対象経費 カスタマイズ機器やソフト+ハードの製品本体価格と導入経費

省力化投資補助金の活用事例としては、以下のようなケースが考えられます。

活用イメージ

  1. 自動券売機を導入し、人手不足を解消しつつ店舗の回転率を向上させる
  2. 無人輸送車を導入し、工場内や倉庫内の物流業務を自動化し、業務効率化や生産性向上を図る

事業承継・M&A補助金

事業承継・M&A補助金は、中小企業の生産性向上や持続的な賃上げを目的とし、事業承継やM&A(企業の合併・買収)専門家相談費用などが支援対象となります。

2025年の変更点

2025年は、新たに「PMI推進枠」が設けられ、これにより合計4つの申請枠(事業承継促進枠、専門家活用枠、PMI推進枠、廃業・再チャレンジ枠)が用意されています。また、一部の申請枠では補助上限額が最大2,000万円に引き上げられ、より大規模な専門家活用やM&A後の統合支援にも対応できるようになっています。

PMI推進枠 PMI専門家活用類型
補助対象者 M&Aに伴い経営資源を譲り受ける予定の中小企業が、PMI(経営統合プロセス)の取り組みをおこなう際に、専門家を活用する場合
補助上限額 150万円
補助率 2分の1
対象経費 PMIにかかる専門家の費用など
・謝金
・旅費
・外注費
・委託費
・システム利用料
・保険料
PMI推進枠 事業統合投資類型
補助対象者 M&Aに伴い経営資源を譲り受ける予定の中小企業が、PMI(経営統合プロセス)の取り組みをおこなう際に、設備投資を伴う場合
補助上限額 800万円~1,000万円
一定の賃上げをおこなう場合は、補助上限額が1,000万円に引き上げられます
補助率 2分の1、小規模事業者は3分の2
対象経費 PMIにかかる設備投資や外注費など
・設備費
・外注費
・委託費 など

事業承継・M&A補助金の公式サイトには、以下のような活用事例が挙げられています。

活用イメージ

  • 先代からの事業承継に伴い、施設を改修して新規事業を開業する
  • 専門家と協力しながら、M&Aによって委託先企業の事業を承継する

業務改善助成金

業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げると同時に、生産性向上を目的とした設備投資などを実施した場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度です。賃上げと設備投資をセットで取り組む事業主を支援します。

2025年の注目点

2025年の業務改善助成金で最も注目すべき点は、その予算額が大幅に増加していることです。2024年度予算の8.2億円に対し、2025年度予算は22億円が予定されており、より多くの事業主がこの助成金を活用できること、そして助成額自体が増加することが期待されています。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進することを目的とし、正社員化や処遇改善にかかった費用の一部を助成する制度です。

2024年度では、一部コースの賃上げ率に新しい区分が追加され、賃上げ率が高い場合の助成額が引き上げられています。また、新たに昇給制度を設けた企業を対象とした加算措置も新設されました。

正社員化コース

有期雇用労働者などを正規雇用労働者(正社員)などへ転換した場合などに活用できます。2025年からは、支給対象となる労働者の適正化が図られました。

通算雇用期間などの特定の条件を満たす労働者が重点支援対象者として位置付けられ、重点対象者以外への助成額は減額され、申請期間も1期のみとなりました。新卒者は一定期間対象外となります。

重点対象者とされる不安定雇用者とは

雇入れから3年未満であり、過去5年間正規雇用労働者であった期間が1年以下、かつ過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない人などを指します。

また、障害者正社員化コースもあります。

賃金規定等改定コース

有期雇用労働者などの一部またはすべての労働者の基本給の賃金規定などを改定し、3%以上増額させる際に活用できます。

2025年からは、賃金引き上げ率の区分が2段階から4段階に増え、6%以上の区分が新設されたことで、高賃上げ率の場合の助成額が引き上げられました。また、新たに昇給制度を整備した事業主に対する助成が新設されました。

賃金規定等共通化コース 有期雇用労働者などに関して、正規雇用労働者と共通の職務などに応じた賃金規定等を作成し、適用する際に活用可能
賞与・退職金制度導入コース 有期雇用労働者などを対象とした賞与または退職金制度を新たに設け、適用する際に活用可能
社会保険適用時処遇改善コース 短時間労働者が新たに社会保険の被保険者となる際に、労働者の収入を増加させる取り組み(手当支給、賃上げ、労働時間延長など)をおこなう場合に活用可能

そのほかの雇用・労働分野の助成金・補助金一覧

上記以外にも、雇用や労働環境の改善に役立つ助成金・補助金は多くあります。ここからは厚生労働省の公式サイトを参考に、雇用・労働分野の主な助成金・補助金のなかでも、2025年に変更があるものを中心にご紹介します。

早期再就職支援等助成金

早期再就職支援等助成金とは、事業規模の縮小などにより離職を余儀なくされる労働者や、特定の求職者の再就職支援や雇入れを支援する助成金です。

2025年の変更点

離職を余儀なくされた労働者などを期間の定めのない労働者として雇い入れ、賃金を5%以上上昇させた事業主を助成する「雇入れ支援コース」において、受入れ人材育成型訓練への助成は廃止されます。これは、利用実績が少ないことなどが理由です。

65歳超雇用推進助成金

65歳超雇用推進助成金とは、65歳以上の労働者の雇用促進を目的とした助成金です。企業が65歳以上への定年引き上げ、継続雇用制度の導入、高齢者向けの雇用管理制度の整備(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)、高年齢の有期契約労働者の無期雇用転換(高年齢者無期雇用転換コース)などを実施した場合に助成されます。

2025年の変更点

65歳超継続雇用促進コースにおいて、支給対象事業主の要件だった「高年齢者雇用安定法の遵守期間」の要件が削除され、申請手続きが簡素化されます。高齢者雇用安定法に違反する就業規則であっても、計画申請または支給申請時に同時に順守する形に改正すれば支給可能となります。

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金とは、就職が特に困難な特定求職者を、ハローワークなどの紹介により継続して雇用する事業主に対し助成します。
高年齢者(60歳以上)、障害者、母子家庭の母、生活保護受給者など

2025年の変更点

生活保護受給者等雇用開発コースの申請手続きが簡素化されます。就職氷河期世代安定雇用実現コースは廃止されました。代わりに「中高年層安定雇用支援コース助成金(仮称)」が新設されます。これは35歳以上60歳未満の不安定就労者を対象とした支援制度で、支給金額は中小企業で60万円(大企業で50万円)です。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金とは、職業経験などが不足しており、安定的な就職が困難な求職者を、ハローワークなどの紹介により一定期間(原則3カ月)試行的に雇用する事業主を支援する助成金です。これにより、求職者と事業主の相互理解を深め、常用雇用への移行を促進します。

2025年の変更点

支給対象となる労働者の年齢上限が60歳未満に見直しされました。一般トライアルコースのほか、障害者トライアルコース、障害者短時間トライアルコース、若年・女性建設労働者トライアルコースなどもあります。

両立支援等助成金

両立支援等助成金とは、育児や介護と仕事の両立を支援するための休業制度や短時間勤務制度の導入、そのほか職場環境整備をおこなう企業に対する助成です。不妊治療や女性の健康課題(月経、更年期)に対応するための雇用環境整備に取り組む場合も対象となります。

2025年の変更点

介護休業の助成要件が「合計5日以上」から「連続5日以上」に変更されました。また、助成金の支給タイミングが「休業取得時と職場復帰時の分割支給」から「職場復帰時の一括支給」に変更され、2025年10月の育児・介護休業法改正法の施行に合わせ、支給要件となる柔軟な働き方選択制度などの導入数が2つ以上から3つ以上に引き上げられました。

新たに「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース助成金」が新設されました。 2024年12月補正予算により、出生時両立支援コースが第2種のみ申請可能に、育休中等業務代替支援コースが拡充されています。

人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金とは、雇用管理改善や労働環境の向上を図る事業主や事業協同組合などに対し、人材の確保・定着を目的として助成するものです。

2025年の変更点

複数のコースが統合・再編されています。「雇用管理制度助成コース」が「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」に統合されました。このコースでは、賃金規定制度、人事評価制度、健康づくり制度などの雇用管理制度に加え、従業員の作業負担軽減のための機器・設備などの導入も助成対象に追加されています。

また、人事評価等改善コースも統合されています。建設業分野のコースや、外国人労働者向け、テレワーク導入向けのコースなども含まれます。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、企業が従業員のスキルアップや職業訓練を実施した際に助成される制度です。

職務に関連する訓練、OJT(職場での実務を通じた訓練)とOFF-JT(職場を離れておこなう研修)を組み合わせた訓練、有給教育訓練休暇制度の導入、デジタル人材や高度人材の育成訓練、労働者が自発的におこなうリスキリング(新しいスキルや知識の習得)訓練、新規事業に必要な知識・技能習得訓練などが対象となるコースがあります。

2025年の変更点

人材育成支援コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースにおいて、訓練期間中の賃金助成額が引き上げられました。

人材育成支援コースでは、有期雇用労働者(契約社員やパート、派遣社員など非正規雇用労働者)への支援が見直され、正規雇用労働者への転換などをおこなった場合の高率助成は廃止されましたが、有期契約労働者などに訓練を実施した場合の経費助成率が70%(訓練終了後に賃上げした場合は85%)に引き上げられました。

有期実習型訓練についても、正規雇用労働者への転換などを一層促進するため、助成メニューを転換などした場合に限定し、経費助成率が75%(賃上げした場合は100%)に引き上げられました。

助成金・補助金を申請する前に知っておきたい注意点

これらの助成金や補助金制度を効果的に活用するためには、申請前に以下の注意点を確認しておきましょう。

申請には「GビズIDプライムアカウント」が必要

多くの補助金・助成金制度の申請手続きは「GビズIDプライムアカウント」と呼ばれる共通のデジタルアカウントを使用しておこなわれます。アカウントの取得には時間がかかる場合があるため、申請を検討し始めたら、早めに取得手続きを進めることをおすすめします。

原則として「後払い」である

補助金や助成金は、多くの場合、事業がすべて完了し、かかった経費や成果を報告した後に交付(助成金の支給)されます。申請時には事業計画だけでなく、事業実施期間中の資金繰りも含めた事前の資金計画が非常に重要になります。

ただし、一部の地方自治体の助成金などでは、事業実施前にある程度の金額が交付される「概算払い」に対応している制度もあります。

申請した事業者全員に交付されるわけではない

補助金や助成金を利用するためには、提出した申請書類や事業計画が審査され、採択(補助金や助成金の交付を受けるための承認)される必要があります。

不採択になるケースも

書類の記載漏れや不備、制度の要件を満たしていないといった理由で不採択になってしまうケースも少なくありません。

申請を検討する制度の公募要領をしっかりと読み込み、内容を理解したうえで、必要な書類を正確に準備することが非常に大切です。

予算に応じて早期終了する場合がある

補助金や助成金制度は、国や自治体があらかじめ定めた予算によって運営されています。申請件数が多く、採択された事業に多くの予算が使われた場合、当初予定していた公募期間よりも早く申請受付が終了してしまうことがあります。

締め切り間際になって慌てて準備を始めると、間に合わないリスクが高まります。申請したい制度がある場合は早い者勝ちではありませんが、できるだけ早い段階で公募概要に目を通し、申請に必要な書類の準備やスケジュール感を把握しておくことをおすすめします。

まとめ

2025年は、中小企業や個人事業主にとって、事業の新たな展開や成長を後押しする多くの助成金・補助金制度がスタート・変更されます。特に、新たな2つの補助金制度の開始や、既存の助成金・補助金における支援内容の見直しなどは見逃せません。

これらの制度を効果的に活用するためには、最新の情報を早期に収集し、自社の目的や状況に合った制度を見つけることが第一歩です。申請には事前のGビズIDプライムアカウント取得や資金計画、正確な書類準備が必要となります。予算による早期終了のリスクも考慮し、早めの準備がカギとなるでしょう。

必要に応じて専門家の知見も借りながら、2025年度の助成金・補助金を最大限に活用し、事業のさらなる発展を目指してください。

監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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