この記事の結論
- インセンティブは報奨金だけではなく物品や旅行なども対象にできる
- インセンティブの付与条件を成果に偏らないようにすることがポイント
- モチベーションが上がるかどうかは社風や従業員の性質によって異なる
この記事の結論
インセンティブを導入すれば企業の利益が上がると思い、導入を検討している方は多いのではないでしょうか。
インセンティブは努力しただけ給与が上がるとは限らず、従業員によっては不公平に感じる場合があります。メリットやデメリットを理解し、自社に適した形でインセンティブを導入することが大切です。
本記事ではインセンティブの意味や種類、メリット・デメリット、導入のポイントなどについて詳しく解説します。
目次
インセンティブとは、条件を満たした従業員に報奨金や物品、旅行、休暇などを与えることで成果の向上や企業の目標の達成を促す制度です。
たとえば、優秀な成績を収めた従業員に報奨金や自社製品、旅行、休暇、株式、商品券などを与えます。
一般的には一定額を超える売上を挙げた場合に、その超えた分の売上の一定割合の報奨金を給与に上乗せする仕組みが採用されています。
インセンティブといえば、成果を挙げた人物に対して報奨金を与えるものと考えがちですが、ほかにもさまざまなものが対象となります。
インセンティブの種類とそれぞれの特長について詳しく見ていきましょう。
報奨金は、インセンティブの条件を満たした従業員の給与に、一定の方法で算出した金額を上乗せして支払う仕組みです。
個人目標の達成時だけではなく、チームの目標達成の際にもインセンティブを支給する場合があります。
物品を活用したインセンティブは、条件を満たした従業員に次のような物品を支給する仕組みです。
従業員が喜ぶ物品でなければ、インセンティブのメリットである従業員のモチベーションアップは実現できません。社員の年齢や性別、趣味趣向などを考慮して、物品を決める必要があります。
インセンティブにおける人事異動は、条件を満たした従業員に異動を提案する方法です。
ただし人事異動は従業員にとって大きな分岐点になり得るため、強制しないことが重要です。強制となれば、その人事異動を魅力に感じない従業員にとっては逆効果になります。インセンティブにおける人事異動は、強制せず提案をしましょう。
インセンティブの条件を満たした従業員に、旅行や休暇を与える方法もあります。
インセンティブ制度は、設けるべきとは限りません。メリットを理解したうえで、自社に適した制度かどうかを判断しましょう。インセンティブ制度のメリットは以下のとおりです。
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
成果に応じた報酬を得られることで、従業員のモチベーションアップが期待できます。年功序列によって生じる不公平感も、インセンティブ制度の導入により軽減されるでしょう。
また、インセンティブは賞与(ボーナス)と比較して短期的なスパンで受け取れるため、従業員はより迅速に成果を実感し、モチベーションを高めることができます。
インセンティブは変動費である点もメリットです。コストと利益のバランスが崩れることがありません。
たとえば営業成績に基づいて成功報酬を支給する場合、その支出は営業成績に直結しています。つまり売上が上がれば支払う報酬も増加し、逆に成績が伸び悩んでいる場合は支出が増えない仕組みです。
報奨金の額を抑えたいからといって、業績が良いときは報奨金計算の割合を下げて、業績が悪いときは上げることはできません。このような変更には従業員の同意が必要です。
インセンティブの適用条件を、会社の目標や指針に連動させることがポイントです。従業員が会社の指針に応じて行動しようとすることで、企業にとって理想的な従業員になるよう促すことができます。
チームワークを重視する企業では、個人ではなくチームでの目標達成をインセンティブの条件に設定します。
インセンティブ制度には、次のデメリットがあります。
それぞれのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
インセンティブ制度が逆に社員のモチベーションの低下を招いてしまう可能性があります。これは「社員が努力しているのに結果が出ない」といった状況から生じるものです。
売上目標の達成をインセンティブの条件とする場合、市場環境や競合状況の変化により業績が伸び悩んだ際に、一生懸命に働いても目標達成が難しい状況になります。結果として努力したのに給与に反映されない事態が生じます。
また研究職やクリエイティブ職のように、インセンティブの条件を定めることが難しい職種との不公平が起こらないように注意が必要です。
インセンティブ制度は基本的に「個人の実績」を評価する傾向があります。その結果、チームワークが乱れる可能性があることに注意が必要です。
チームでプロジェクトに取り組んでいる場合、従業員は自らの成果を挙げることに注力してしまい、他のメンバーとの連携や協力がおろそかになる可能性があります。
従業員が目の前のノルマを達成して報酬を得ることに注力しすぎる場合があります。
営業職で個々の成績に基づいてインセンティブが支給される場合、従業員は月次の売上目標の達成に大部分のリソースを充ててしまい、新規開拓営業がおろそかになることで数カ月先の利益が減少する可能性があります。
インセンティブの計算方法は、企業があらかじめ決めておく必要があります。方法としては、
の2パターンが挙げられます。
報奨金額は「上振れ分 × インセンティブ率」で求めます。下記のケースの計算方法は、以下のとおりです。
目標 | 40万円 |
---|---|
売上 | 70万円 |
上振れ分 | 30万円 |
インセンティブ率 | 15% |
30万円 × 0.15(15%) = 4.5万円
インセンティブは課税対象のため、所得税や社会保険料が発生します。インセンティブの税金の扱いについて詳しく見ていきましょう。
インセンティブによる報奨金や物品は、所得税の課税対象です。インセンティブの扱いは成果報酬や出来高払いの給料と同様の扱いのため、金額を問わず所得税が課税されます。
チームに対して一括で支給された場合でも、最終的には個人に分配されることが前提です。そのため、個人の所得として課税されます。
従業員が売上の一定割合の報奨金を受け取る場合、歩合給として扱われて社会保険料の対象となります。
歩合給が月ごとに変動する場合、その度に社会保険料が変動します。従業員が予想よりも受取額が低くてモチベーションアップの効果を得られない事態を防ぐために、あらかじめ社会保険料がかかることを伝えておきましょう。
インセンティブ制度を導入する際は、次のポイントを押さえましょう。
それぞれ詳しく解説します。
インセンティブ制度を導入する際には、アルバイトを対象にするかどうかを検討することが重要です。特にアルバイトが正社員と同様の業務をおこなっている場合、アルバイトにだけインセンティブが適用されないとなれば、モチベーションの低下につながります。
インセンティブは報奨金だけではなく物品や旅行、休暇など、さまざまな報酬を組み合わせることが大切です。従業員によって、モチベーションアップにつながる報酬が異なります。
インセンティブはすべての従業員が公平であることを前提として、制度設計することが重要です。
インセンティブ制度において成果だけでなく個々の貢献度など、成果以外の要素にも焦点を当てることが重要です。
チームの成功につながる貢献をしたとしても、それが数値に表れるとは限りません。チームメンバーへのフィードバックを通じて貢献度が高い人物を確認し、インセンティブの付与を検討しましょう。
インセンティブ制度は従業員のモチベーションアップにつながる可能性がありますが、適用範囲や条件、種類などについて十分な検討が必要です。従業員の特性や社風に合わせて導入することで、そのメリットを得ることができます。
今回解説した内容を参考に、インセンティブの導入を検討してみてください。
労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
詳しいプロフィールはこちら