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社会保険の同日得喪手続きとは?条件や社会保険料、手続きに必要なものを解説

社会保険の同日得喪手続きとは?条件や社会保険料、手続きに必要なものを解説

監修者:労務SEARCH 編集部
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この記事でわかること・結論

  • 同日得喪とは、社会保険の資格喪失と資格取得を同日におこなう任意の手続き
  • 再雇用後に収入が減ってしまう場合は、同日得喪の手続きをすることで社会保険料の見直しができる
  • 社会保険料の負担は軽減できるが、年金や給付金の受取額にも影響するという注意点がある

同日得喪とは、社会保険の資格喪失と資格取得を同日におこなうことで社会保険料を軽減する手続きのことを言います。

60歳以上で退職して1日も空けることなく再雇用される労働者が対象者です。一旦労使関係を終了させることによって、標準報酬月額および社会保険料を見直しするという目的があります。

本記事を参考に、社会保険の同日得喪手続きの基本内容や必要書類、覚えておきたい注意点などをおさえておきましょう。

同日得喪の手続きとは

同日得喪の手続きとは

同日得喪(どうじつとくそう)の手続きとは、社会保険の資格喪失そして資格取得を同日におこなうことを言います。主に定年後再雇用制度を利用する労働者がおこなう手続きです。

同日得喪の手続きをする理由は、標準報酬月額を変更して社会保険料を軽減するためです。労働者の賃金をもとに決定する標準報酬月額は、以下のような変更タイミングがあり、再雇用後の給与変動時は通常であれば「随時改定」にあたります。

定時改定 4月〜6月の報酬に応じて毎年7月に決定、9月より反映
随時改定 固定賃金の変動時に決定、変動月から4カ月目に反映

随時改定後の社会保険料が反映されるのは4カ月目のため、再雇用後に収入変動があったとしても3カ月間はこれまでの社会保険料を負担しなければなりません。

収入が減る場合は、社会保険料が大きな負担となる

60歳以降の再雇用にて労働条件が大きく変わり収入が減ってしまう場合、これまでの標準報酬月額をもとにした社会保険料を3カ月間支払うのは大きな負担になるでしょう。

ですが「同日得喪の手続き」をおこなうことで労使関係を一旦終了させ、標準報酬月額を見直せます。退職時に社会保険の資格喪失手続きをおこない、同日に改めて資格を取得することで、再雇用後の収入をもとにした標準報酬月額を適用します。

同日得喪の手続きをしたあとは、退職月の翌月から社会保険料が反映されるため負担を抑えられます。

同日得喪の対象者

同日得喪の手続きは60歳以後に退職を迎え、1日も空けることなく継続再雇用される労働者が対象者となります。そのため定年後に嘱託社員として雇用される労働者だけではなく、60歳以上の有期労働契約者も、契約更新時に同日得喪の手続きが可能です。

正社員の方に限定されるものではなく、厚生年金保険などの被保険者であるパートタイム・アルバイトの方も同日得喪手続きの対象者となります。

同月得喪との違い

似ている言葉に「同月得喪(どうげつとくそう)」があります。同月得喪とは、同月内で社会保険の資格取得と資格喪失をおこなうことです。

例:同月得喪に該当するケース

たとえば、4月1日に入社した労働者が同年4月25日に退職するなどのケースが同月得喪に該当します。社会保険の資格取得は入社日ですが、資格喪失は退職日の翌日です。そのため同年4月30日を退職日とする場合は、同月得喪には該当しません。

同日得喪が再雇用などで「同日」に社会保険の資格取得と資格喪失をおこなうのに対して、同月得喪は「同月内」でおこなうという違いがあります。

同日得喪の手続きに必要なもの

同日得喪の手続きに必要なもの

同日得喪の手続きは、対象者の被保険者資格喪失届被保険者資格取得届を事業主が年金事務所などへ同時に提出します以前の健康保険被保険者証を返却することも忘れないようにしましょう。

事業所が厚生年金基金や健康保険組合に加入している場合は、それら厚生年金基金や健康保険組合にも同届出の提出が必要です。

さらに添付書類として、退職したことがわかる書類や継続して再雇用されたことが客観的に判断できる書類、または事業主の証明が必要です。

同日得喪手続きの添付書類

事業主の証明は、退職日と再雇用日の記載があれば問題ありません。日本年金機構の公式Webサイトでは「継続再雇用に関する証明書」という様式がダウンロードできるためこちらを使用するのも良いでしょう。

また、対象者が法人役員などの場合は、役員を退任したことがわかる書類(役員規定、取締役会の議事録)や、退任後に嘱託社員として再雇用されたことがわかる書類、または事業主の証明が必要です。

同日得喪の手続きの注意点

同日得喪の手続きの注意点

同日得喪の手続きをするうえで、注意点がいくつかあるため解説します。

再雇用後の収入によっては不要

同日得喪の手続きは再雇用後に収入が下がる場合、以前の社会保険料のままでは手取りが減ってしまうため、早い段階で標準報酬月額の変更をおこなうという目的があります。

そのため、再雇用後の収入に変化がない場合は社会保険料にも変化がないため、同日得喪の手続きをする必要がありません。反対に収入が上がる場合は随時改定まで待ちましょう。

社会保険の給付額などが減る

同日得喪の手続きは、再雇用で収入が減る場合に社会保険料の負担を軽減するためにおこないます。つまり同日得喪の手続きをおこなえば、社会保険の給付額にも影響します。

社会保険の給付金とは、たとえば病気やけがで休業中に被保険者および家族の生活を保障する傷病手当金や、将来もらえる厚生年金額などがあります。これらは標準報酬月額を利用して算出されるため、同日得喪の手続きによって受取額が減ってしまいます。

そのため、再雇用される前に収入の変化や手取りを計算してみて、社会保険料が負担になりそうであれば同日得喪の手続きをする方が良いでしょう。

同日得喪の手続きに関するよくある質問

同日得喪の手続きに関するよくある質問

同日得喪の手続きとはなんですか?
社会保険の資格喪失と資格取得を同日におこなうことを「同日得喪(どうじつとくそう)の手続き」と言います。再雇用で収入が減るといった際に、標準報酬月額を変更して社会保険料の負担を軽減する目的でおこないます。
同日得喪の手続きの対象者は?
同日得喪の手続きは、60歳以後に退職して1日も空けることなく再雇用される方が対象者です。ただし、再雇用後の収入に変化がないもしくは収入が上がるなどの場合は必要ありません。
同日得喪の手続きの注意点は?
同日得喪の手続きでは、収入が下がる場合に標準報酬月額を変更します。収入低減に合わせて社会保険料の負担が減るため、その分将来の年金や傷病手当金などの受取額が減るという注意点があります。

まとめ

60歳以上かつ退職後1日も空けることなく再雇用される労働者は、収入が減る見込みであれば、同日得喪の手続きをすることで標準報酬月額を見直して社会保険料の負担を軽減できます。再雇用後に労働条件の変化がない場合や、むしろ収入が上がるという場合は同日得喪の手続きをする必要がありません。

この同日得喪の手続きは、主に定年後再雇用制度を導入している企業でよく見受けられます。該当する予定の労働者がいる事業所は、同日得喪の手続きについて再確認しておきましょう。

監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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