この記事でわかること
- 雇用保険の加入・脱退手続き方法
- 雇用保険の手続きに必要な書類
- 雇用保険の手続きに関する注意点
この記事でわかること
雇用保険の適用拡大(加入条件の緩和)を受け、雇用保険の対象者が増えています。
一方で、行政の業務効率化に向けた取り組み(マイナンバー制度や電子申請)も広がっており、事業主は雇い入れた従業員が雇用保険の加入条件を満たした場合、迅速かつ適切に雇用保険の手続きをおこなわなければなりません。
今回は、事業主が知っておきたい雇用保険の手続きの概要から必要書類、注意点を解説します。
目次
雇用保険とは、労働者の生活および雇用の安定と就職の促進のために、労働者が失業した場合および教育訓練を受けている場合に、失業等給付を支給する目的で創設された、政府が運営する強制保険制度です。
近年では、社会保険の適用拡大が進められており、また、雇用保険の加入対象者も増えています。
1人でも従業員を雇い入れ、以下の加入条件を満たした場合、雇用形態(パート・アルバイト含む)に限らず全ての労働者は、雇用保険の加入対象者となります。
雇用保険の加入条件
同一の事業主の適用事業に継続していることも必要です。
また、労働保険の適用事業となった場合、適用事業者として保険関係成立届の提出が必要です。
雇用保険の手続きでは、以下の書類が必要です。
雇用保険手続きの必要書類
それぞれ必要書類の提出期限は、下記のとおりです。
必要書類 | 提出期限 |
---|---|
保険関係成立届 | 保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内 |
雇用保険適用事業所設置届 | 適用事業所設置日の翌日から起算して10日以内 |
雇用保険被保険者資格取得届 | 雇用日あるいは雇用保険の加入要件を満たした日の翌月10日 |
また、雇用保険適用事業所設置届を提出する際は、以下の添付書類が必要です。いずれか最低ひとつ
雇用保険の手続きは、加入手続きと脱退手続きの2つに分けられます。従業員の入社・退職時または事業所の新設・廃止時に、スムーズに手続きをおこなえるように確認しておきましょう。
事業主は事業所設置時と雇用保険の加入条件を満たした従業員を雇い入れするたびに、雇用保険の加入手続きをおこないます。
事業所設置時から従業員の雇用保険加入手続きまでの流れは、以下のとおりです。
事業主がおこなう雇用保険の加入手続き
雇用保険被保険者資格取得届は、雇用保険の加入条件を満たした従業員を雇い入れするたびに提出が必要です。
従業員から退職の意思表明を受けた場合、人事・労務担当者は雇用保険の喪失届を提出しなければなりません。
離職者の退職日の翌日から10日以内に雇用保険被保険者資格喪失届と雇用保険被保険者離職証明書(離職証明書)を所轄するハローワークに提出します。手続き完了後、以下の書類を発行します。
なお、雇用保険被保険者資格喪失届は電子申請が可能です。詳しい手順は、厚生労働省の雇用保険被保険者資格喪失届 (離職票交付あり) 電子申請手順を確認してみてください。
事務所廃止に伴い雇用保険を脱退する際は、事務所廃止日の翌日から10日以内に「雇用保険適用事業所廃止届」と廃止を証明できる書類を提出します。詳しくはこちらの記事をご参考ください。
2018年5月より、雇用保険の手続きに個人番号(以下:マイナンバー)が必要となりました。下記の書類には、マイナンバーの記入が必要です。
マイナンバーの記載がない場合は「不備あり」とみなされ、返戻されてしまうので注意をしましょう。
雇用保険被保険者資格取得届は、提出ごとにマイナンバーの記入が必要です。
手続き遅延にならないよう、事前に従業員に利用用途を知らせた上で、マイナンバーを知らせてもらいましょう。
なお、以下の必要書類には雇用保険の手続きにおいてマイナンバーの記載は必要ありません。
事業主は上記の届出を提出するにあたり「従業員のマイナンバーをハローワークに届出済みであるか」を確認します。
マイナンバーの届出をおこなっていない場合は、届出書類に「個人番号登録・変更届」を添付のうえ、原則として事業主を経由して提出しなければなりません。
やむを得ない理由により、事業主を経由して届出書類を提出できない場合は、従業員本人が届出をおこなえます(あらかじめハローワークに確認をしておく必要があります)。
従業員のマイナンバーは厳重に管理する必要があり、個人情報漏えいを防ぐためにも雇用保険の手続きには電子申請がおすすめです。
人事・労務担当者は、雇用保険の手続き上で注意点を把握しておきましょう。
フルタイムのパート従業員が途中で勤務日数を減らした場合、一般被保険者から外れる可能性があります。その場合、勤務時間変更日の前日に離職したものとして資格喪失手続きをおこないます。
一方で、労働時間が増えて雇用保険の加入条件を満たした場合、雇用保険の通常手続きをおこないます。
一時的に労働時間が増える場合は対象外です。
雇用保険の加入者区分は、
の4区分に分類できます。
日雇労働被保険者の場合、以下の4つのうちいずれかを満たした日雇労働者のみ雇用保険の加入対象者となります。
65歳上の労働者も、雇用保険の加入条件を満たしている場合は加入対象者となります。
また複数の事業所で勤務する場合、労働者は雇用保険マルチジョブホルダー制度の活用を希望できます。
雇用保険の加入条件を満たしている従業員を雇用しているにもかかわらず、雇用保険に加入させなかった場合、事業主は懲役6カ月以下あるいは罰金30万円の罰則を科されます。
原則として即座に罰則が適用されることはありませんが、労働局からの是正勧告を繰り返し受け悪質と判断される場合、罰則が科せられることがあります。
適用事業として事業所を設置する際や、雇用保険の加入条件を満たしている従業員の雇い入れ時、そして退職する従業員が発生した際は、それぞれ適切に手続きをおこないます。
提出期限もあるため、余裕を持った雇用保険手続きをおこないましょう。
1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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