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退職時に欠かせない「離職票」発行手続きを掘り下げる

雇用保険に加入している従業員が退職したときに必ず行うべきことが、離職証明書のハローワークへの提出や離職票の発行などの離職者への交付手続きですが、細かい部分でわかりづらい点もいくつかあります。

例えば、離職票上の賃金はどこまで含むのか、従業員本人の署名捺印が取れない場合の対応はどうすればいいか、特定受給資格者や特定理由離職者とはどのようなものかなど、離職票を掘り下げて用語を解説します。

離職票に記載する雇用保険上の賃金額

離職票に記載する雇用保険上の賃金額とは「総支給額」を指します。
総支給額とは、雇用主より支給される給与から、所得税、社会保険料(年金など)、その他の控除(住民税や財形貯蓄などの積立金等)などの社会保険料が天引きされていない金額で、そこには時間外手当や通勤手当などの各種手当が含まれます。

毎月支給される給料や残業手当はその月に支給された控除前の金額を書きますが、通勤手当など数か月に一度支給されるものは月割り計算で按分します(例:6か月定期券を買った場合、購入金額を6で割り、毎月の支給額に加算する)。

離職票に雇用保険上の賃金額を記載する場合は、退職日までの最後の6か月間に支給した賃金の金額を記入しますが、臨時に支払う賃金や3か月を超えるごとに支払う賃金(賞与など)は除きます。

また、退職月の給与の算出方法には特に法的な決まりはなく、離職者が勤務していた会社の就業規則に準じて決められます。

離職証明書に離職者氏名の押印又は署名が取れないとき

雇用保険の被保険者が退職する場合、事業者は雇用保険被保険者資格喪失届と雇用保険被保険者離職証明書(離職証明書)を、事業所のある地域を管轄するハローワークに提出する必要があります。

離職証明書とは、離職者が失業手当の給付を受ける際に必要となる離職票を請求できるようにするために交付する書類で、「事業主控え」、「ハローワーク提出用」、「雇用保険被保険者離職票2」の3複写となっています。

離職証明書には退職者本人の記名捺印または自筆による署名が必要ですが、本人退職後などの理由で署名や捺印が取れない場合は、「本人退職後のため」などの理由を明記した上で事業主印を押印することで代わりとなります。

特定受給資格者の意味と対象となる離職理由

雇用保険の被保険者であった退職者が、失業中の生活と再就職の支援のために支給されるのが、「基本手当」です。
基本手当を受給できる期間は、退職者の年齢、雇用保険の被保険者だった期間、仕事を辞めた理由などにより90日~360日の間で決められますが、倒産などの理由で退職した離職者は「特定受給資格者」となります。

特定受給資格者の対象となる離職理由

  1. 「倒産」等による離職

    倒産、事業所の廃止、事業所の移転による通勤困難、事業所の大量雇用変動など

  2. 「解雇」等による離職

    退職者に落ち度のない解雇、労働契約で明示された労働条件との著しい相違、賃金の不払いや不当な減給、過度の時間外労働、パワハラなどのハラスメント、不当な退職勧告など

これらの理由は雇用保険法により細かく定められていますが、それによって特定受給資格者と認められた場合は、一般の退職者よりも基本手当の受給期間が長くなります。

特定理由離職者の意味と対象になる離職理由

特定資格受給者と同じく、離職者にやむを得ない理由があったと認められる場合があります。それが「特定理由離職者」です。本人の希望に反して雇用期間の延長がなされなかった場合には、一般の退職者よりも基本手当の受給期間が長くなります。

特定理由離職者の対象となる主な理由

  • 本人の希望に反して雇用の契約期間の延長がされなかった
  • 病気、障害、負傷などの身体的理由
  • 家族の看護や介護など家庭の事情の急変
  • 住所の変更で通勤が困難になった場合
  • 希望退職者の募集に応じた場合

このほかにも様々なケースを想定した理由が雇用保険法により細かく定められていますが、判断が難しいケースもありますので、その場合は最寄りのハローワークに問い合わせる必要があります。

離職票の発行手続きの期日と遅延したときの罰則

従業員が離職により雇用保険被保険者資格を喪失した場合、事業者は離職者の退職日の翌日から10日以内に事業所のある地域を管轄しているハローワークに離職証明書を提出して離職票の発行手続きを行う必要があります。その手続きが終了するとハローワークが離職者に離職票を交付します。

もし事業者がその手続きを理由なく期日までに行わなかった場合、あるいは離職票の発行を拒んだ場合は違法とみなされ、雇用保険法により6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金が適用されます。

ただ、これは離職者が離職票の発行を希望した場合や59歳以上の離職者が対象である場合に適用される罰則であり、離職票を希望しない場合はそれに該当しません。

まとめ

従業員が退職した際のトラブルの多くは、離職理由が違うことなどから生じる離職票の発行手続きの遅れです。それらのトラブルの結果、事業所に罰金が適用される、あるいは退職者本人が3ヶ月の給付制限を受けるなど、双方に不利益が生じます。

そのような事態を防ぐためにも、事業者は雇用保険法で定められた期限までに手続きをし、不明な点があれば管轄のハローワークに相談するなどの確認を怠らないようにしましょう。

岡 佳伸|社会保険労務士 岡 佳伸 事務所

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