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事業主が知りたい雇用保険の手続きを解説! 必要書類や加入条件、注意点まで徹底解説

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雇用保険の適用拡大(加入条件の緩和)を受け、雇用保険の対象者が増えています。

一方で、行政の業務効率化に向けた取り組み(マイナンバー制度や電子申請)も広がっており、事業主は雇い入れた従業員が雇用保険の加入条件を満たした場合、迅速かつ適切に雇用保険の手続きをおこなわなければなりません。

今回は、事業主が知っておきたい雇用保険の手続きの概要から必要書類、注意点を解説します。

この記事でわかること

  • 雇用保険の概要と加入条件
  • 雇用保険手続きと必要書類
  • 申請時の注意点
監修者
蓑田 真吾

みのだ社会保険労務士事務所 社会保険労務士
https://www.minodashahorou.com/

大学卒業後、鉄鋼関連の企業に総合職として就職し、その後医療機関人事労務部門に転職。 約13年間人事労務部門で従業員約800名、新規採用者1,000名、退職者600名の労務、社会保険の相談対応にあたる。 社労士資格取得後にみのだ社会保険労務士事務所を開設し、独立。

雇用保険とは

雇用保険とは

雇用保険とは、労働者の生活および雇用の安定と就職の促進のために、労働者が失業した場合、および教育訓練を受けている場合に、失業等給付を支給する目的で創設された、政府が管掌する強制保険制度です。

近年では、社会保険の適用拡大が進められており、また、雇用保険の加入対象者も増えています。

雇用保険の加入条件と適用事業所

1人でも従業員を雇い入れ、以下の加入条件を満たした場合、雇用形態(パート・アルバイト含む)に限らず、すべての労働者は雇用保険の加入対象者となります。

雇用保険の加入条件

  1. 31日間以上働く見込みがあること()
  2. 所定労働時間が週20時間以上であること
  3. 学生ではないこと(例外あり)

同一の事業主の適用事業に継続していることも必要です。

また、労働保険の適用事業となった場合、適用事業者として保険関係成立届の提出が必要です。

雇用保険手続きの必要書類

雇用保険の手続きでは、以下の書類が必要です。

雇用保険手続きの必要書類

  • 保険関係成立届
  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届

それぞれ必要書類の提出期限は以下のとおりです。

保険関係成立届 保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内
雇用保険適用事業所設置届 適用事業所設置日の翌日から起算して10日以内
雇用保険被保険者資格取得届 雇用日あるいは雇用保険の加入要件を満たした日の翌月10日

また、雇用保険適用事業所設置届を提出する際は、以下の添付書類が必要です。

いずれか最低ひとつ

雇用保険の手続き

雇用保険の手続き

雇用保険の手続きは、加入手続きと従業員の退職に伴う手続きの2つに分けられます。

雇用保険の加入手続き

事業主は事業所設置時と雇用保険の加入条件を満たした従業員を雇い入れするたびに、雇用保険の加入手続きをおこないます。

事業所設置時から従業員の雇用保険加入手続きまでの流れは、以下のとおりです。

事業所設置時の事業主がおこなう手続き

  • 保険関係成立届を労働基準監督署に提出
  • 保険関係成立届の控えと雇用保険適用事業所設置届をハローワークに提出
  • 雇い入れた従業員の雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出

雇用保険被保険者資格取得届は、雇用保険の加入条件を満たした従業員を雇い入れするたびに提出が必要です。

雇用保険の退職手続き

従業員から退職の意思表明を受けた場合、人事・労務担当者は雇用保険の喪失届を提出しなければなりません。

離職者の退職日の翌日から10日以内に雇用保険被保険者資格喪失届と雇用保険被保険者離職証明書(離職証明書)を所轄するハローワークに提出します。

手続き完了後、以下の書類を発行します。

また、雇用保険被保険者資格喪失届は電子申請が可能です。

雇用保険の手続きでの注意点

雇用保険の手続きでの注意点

人事・労務担当者は雇用保険の手続き上で注意点を把握しておきましょう。

途中で雇用形態が変わる場合

フルタイムのパート従業員が途中で勤務日数を減らした場合、一般被保険者から外れる場合があります。

上記の場合、勤務時間変更日の前日に離職したものとして、資格喪失手続きをおこないます。

一方で、労働時間が増えて雇用保険の加入条件を満たした場合、雇用保険の通常手続きをおこないます。
一時的に労働時間が増える場合は対象外です。

契約上の所定労働時間によって、判断されます。

日雇労働被保険者の取り扱い

雇用保険の加入者区分は、「一般被保険者」「⾼年齢被保険者」「日雇労働被保険者」「短期雇用特例被保険者」の4区分に分類できます。

日雇労働被保険者の場合、以下の4つのうちいずれかを満たした日雇労働者のみ雇用保険の加入対象者となります。

65歳上の労働者の取り扱い

65歳上の労働者も雇用保険の加入条件を満たしている場合、雇用保険の加入対象者となります。

また、複数の事業所で勤務する場合、労働者は雇用保険マルチジョブホルダー制度の活用を希望できます。

雇用保険の未加入は罰則も…

雇用保険の加入条件を満たしている従業員を雇用しているにもかかわらず、雇用保険に加入させなかった場合、事業主は懲役6カ月以下あるいは罰金30万円の罰則を科されます。

原則として即座に罰則が適用されることはありませんが、労働局からの是正勧告を繰り返し受け、悪質と判断される場合、罰則が科せられることがあります。

マイナンバーの記入について

雇用保険の手続きに必要な雇用保険被保険者資格取得届には、個人番号(以下:マイナンバー)が必要です。

2018年5月より雇用保険の手続きにマイナンバーが必要となりました。

マイナンバーの記載がない場合「不備あり」とみなされ、返戻されます。
雇用保険被保険者資格取得届は提出ごとにマイナンバーの記入が必要です。
雇用保険被保険者資格取得届以外の書類は、マイナンバーを届出済みの場合は欄外に「マイナンバー届出済」と記載すれば、マイナンバーの記入は省略できます。

手続き遅延にならないよう、事前に従業員に利用用途を知らせた上で、マイナンバーを知らせてもらいましょう。

雇用保険の手続きで、以下の必要書類にはマイナンバーの記載は必要ありません。

事業主は上記の届出を提出するにあたり「従業員のマイナンバーをハローワークに届出済みであるか」を確認します。

マイナンバーの届出をおこなっていない場合は、届出書類に「個人番号登録・変更届」を添付のうえ、原則として事業主を経由して提出しなければなりません。

やむを得ない理由により、事業主を経由して届出書類を提出できない場合は、従業員本人が届出をおこなえます(あらかじめハローワークに確認をしておく必要があります)

従業員のマイナンバーは厳重に管理する必要があり、
個人情報漏えいを防ぐためにも雇用保険の手続きには、電子申請がおすすめです。

雇用保険の手続き:まとめ

適用事業として事業所を設置する際や、雇用保険の加入条件を満たしている従業員の雇い入れ時、そして退職する従業員が発生した際は、それぞれ適切に手続きをおこないます。

提出期限もあるため、余裕を持った雇用保険手続きをおこないましょう。

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