労務管理システムを選ぶ際のポイント
- 労務管理システムの概要やメリット・デメリットを知る
- 労務管理システムの選び方を知る
- 企業が導入すべき最新の労務管理システムと各特長を知る
従来おこなわれてきた紙媒体での労務管理には、手間・コストや人的ミスの発生、法改正による業務煩雑化などの人事労務担当者に負担を強いる課題が多く存在していました。
これらを改善して業務効率化を図り、人事労務担当者の負担を軽減するツールとして注目されているのが、労務管理システムです。
労務管理システムを選ぶ際のポイント
労務SEARCH(サーチ)は、労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディアサイトです。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
労務管理システムとは、労働に関する事務業務全般の管理を、紙媒体による手作業ではなく、ソフトウェア上で迅速かつ正確におこなえるツール全般です。
労務関連業務を一元管理して効率化することで、従業員や情報の適切な管理、人材の有効活用ができるようになります。
政府は行政手続きのデジタル化・オンライン化を推進しており、2020年4月から特定の法人(大企業)に対し、一部の社会保険手続きの電子申請を義務化しています。
今後、中小企業にも電子申請の義務化が進み、対象手続きが拡大することが予想されます。
電子申請は、総務省が運営する電子申請窓口「e-Gov」から直接おこなえますが、操作が複雑で進捗管理が難しいため、API対応の労務管理システムを利用して、効率的に手続きをおこなうことをおすすめします。
労務管理システムを導入するメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
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労務管理システムを選ぶ際は、以下のポイントを押さえて検討しましょう。
近年、クラウドサービスの発展により、労務管理システムの導入ハードルが下がっております。
そのため、サポート体制や自社が導入したい機能に絞って、選定しましょう。
各労務管理システムで、利用できるサービスや出力可能な帳票が異なります。
効率化したい業務や手間を削減したい手続き、電子申請に対応しているかどうかは、労務管理システム選定の重要なポイントです。
入社手続きに必要な雇用契約書や労働条件通知書、従業員の身上変更(扶養家族の異動や住所変更など)に伴う帳票、給与明細や社会保険算定基礎届、年末調整などの定期業務から、労災や新規事業所開設などの随時業務まで、なるべくひとつのシステムで対応できるものを選びましょう。
e-Govにシステム連携するための仕組みがあるかどうかによって、手続きの労力軽減具合が大きく変わってきます。
e-Gov外部連携API対応の労務管理システムを用いることで、申請データの作成から申請、公文書取得までの全ての機能をシステム上でおこなえるようになります。
既存の電子申請で必要となるe-GovのWebサイト上での操作や手動の管理が不要となり、より効率的な申請が可能です。
また、すでに導入している他社の給与・勤怠システムと連携できるかどうかも重要な選定ポイントです。
新たに導入する労務管理システムが元から利用しているシステムと連携できない場合、機能や使い方の管理や煩雑となり、二度手間になってしまいます。
API連携やエクスポートされたExcel・CSVファイルによる連携が可能かどうか、確認しておきましょう。
機能が多い労務管理システムは便利な反面、使い方がわからなくなることもあります。
提出期限に追われる業務も少なくないため、作業の手を止めずに利用するためのサポート体制も重要になってきます。
電話応答の待ち時間やサポートデスクスタッフの知識レベル、ヘルプセンターの有無などをチェックし、サポート体制を確認しておくと安心です。
労務関連の法改正や帳票の様式変更、保険料率の変更があると、新制度の内容や開始時期、移行期間など細かな確認が必要となり、本来やるべき業務をおこなう上で障害になってしまいます。
法改正・様式変更に対応できる労務管理システムを選ぶことで、必要な情報をシステムに入力するだけで、新制度に対応した申請データの作成が可能です。
労務管理システムの導入時、自社によるセキュリティ体制の構築・アップデートは大変です。
労務管理システム自体に、システムの監視体制や不正アクセスの防止などのセキュリティ体制があるものを選ぶことをおすすめします。
従業員情報を人事担当者が入力しなければならないシステムではなく、従業員自身に入力してもらえる仕組みかどうかも重要です。
従業員からの情報収集ややり取りをパソコンやスマートフォンからおこなうことができれば、二度手間を解消することができます。
また、パソコン操作が苦手な従業員も簡単に申請をおこなえるよう、シンプルで感覚的な操作性の労務管理システムが望ましいでしょう。
労務管理システムの導入形態は、ネットワーク経由で利用する「クラウド型」と、パソコンにソフトをインストールする「パッケージソフト型」に分かれます。
クラウド型の場合、データの自動バックアップや、法改正や書式変更への自動アップデートが可能です。
スマホやタブレットでの利用に対応しているクラウド型労務管理システムも多く、外出時や出張中であってもインターネット環境さえあれば、いつでもどこでも操作することができます。
自宅やコワーキングスペースでの利用も可能なため、テレワークにもスムーズに移行できるでしょう。
パッケージソフト型の場合は、手動でのデータ管理やバージョンアップが必要です。
システムによっては、アップデートがあった際の再購入が必要となってしまうこともあります。
また、ソフトをインストールしていないデバイスからは利用することができません。
労務管理システムの中でも、「オフィスステーション」と「SmartHR」の2つが特に注目されています。
どちらも初期費用0円・利用人数無制限で、顧客満足度の高い労務管理システムです。
月額利用料(従業員50名の場合) | 無料プラン | 無料トライアル期間 | 帳票の種類 | 導入企業数 | 導入企業例 | |
---|---|---|---|---|---|---|
オフィスステーション | 11,000円 | ○(一部機能) | 30日間 | 119種類 | 15,000社以上(2021年3月末日時点) | 日本生命、近鉄百貨店、エステー、産経新聞社 |
SmartHR | 30,000円 | ○(30名以下) | 15日間 | 14種類 | 30,000社以上 | メルカリ、サイバーエージェント、DMM.com |
詳細の利用料金は各社に問い合わせ、ご確認ください。
「オフィスステーション」は労務の作業時間を劇的に削減できる、売り上げNo.1(製造業向け)&メンテナンスフリーのクラウド型労務管理システムです。
分かりやすく、直感的に操作できる設計やデザインで、誰でも簡単に操作することができます。
電子申請はもちろん、登録しているデータの自動入力や自動更新が可能で、金融機関に匹敵する高レベルのセキュリティ体制が整備されています。
119もの帳票に対応しており、帳票名をクリックするだけで簡単に書類作成や申請が可能です。
月単位または年単位(1年・3年・5年)から契約期間を選択でき、長期契約割引も用意されています。
特長は、5つのシステムから効率化・省力化を実施したい業務だけを選べるアラカルト利用に対応している点。
使わない機能に利用料を払う必要がなく、欲しい機能を選択的に利用することで、コストを最適化できます。
ひとつずつ段階的に導入することも、まとめて導入することも可能です。
オフィスステーションの利用料金は、利用人数によって変動します。
利用人数100名で、5つのシステムすべてを利用する場合、従業員1名あたり月額443円(税込)という低価格で利用することができます。
また、従業員人数無制限で一部機能をずっと無料で利用できる「オフィスステーション 労務ライト」もあります。
従業員数 | 年間利用料 | 月額利用料 | 従業員1名あたりの月額利用料 |
---|---|---|---|
100名 | 508,200円 | 44,366円 | 443円 |
「SmartHR」は、登録社数が30,000社以上・シェアNo.1のクラウド型労務管理システムです。
行政への申請をワンクリックで実現でき、クラウド上の管理によるペーパーレス化で手間やコストが削減できます。
従業員が直接入力した最新の労務情報を常に確認・一元管理し、溜まったデータを有効活用することで、経営の効率化が可能です。
特長は、オンライン雇用契約機能やラクラク分析レポートなど、複数のオプション機能が用意されている点。
SmartHR本体とは別でオプション費用が発生してしまいますが、さらなる業務効率化が期待できます。
SmartHRでは、登録された従業員の人数分のみ費用が発生する仕組みです。
「スモールプラン」「スタンダードプラン」「プロフェッショナルプラン」に加え、利用人数が30名までの場合はずっと無料で利用できる「¥0プラン」も用意されています。
月額利用料 | 利用可能なオプション機能 | 多言語化対応 | 履歴登録 | |
---|---|---|---|---|
スモールプラン | 要問い合わせ | – | × | × |
スタンダードプラン | 要問い合わせ | – | ○ | ○ |
プロフェッショナル プラン |
要問い合わせ |
|
○ | ○ |
二大労務管理システム以外にも、以下のような労務管理システムがあります。
「人事労務freee(フリー)」は従業員情報を登録するだけで、低価格で幅広い労務管理を一気通貫でおこなうことができるシステムです。
他社ソフトとの連携も可能で、ガイドに沿って操作するだけなので簡単に利用することができます。
労務の専任者がいない経営者だけの企業から、従業員規模が拡大した中堅企業まで、会社の規模やフェーズに合わせて課題を解決してくれます。
利用できる機能や対応可能範囲によって、「ミニマムプラン」「ベーシックプラン」「プロフェッショナルプラン」「エンタープライズプラン」の4つの料金プランが用意されています。
従業員3名分までは一律料金で、1名追加するごとに月額利用料として課金する仕組みです。
年間利用料(年額プラン) | 月額利用料(年額プラン) | 月額利用料(月額プラン) | 1名追加料金(月額) | |
---|---|---|---|---|
ミニマムプラン | 23,760円~ | 1,980円~ | 2,200円〜 | 300円 |
ベーシックプラン | 47,760円~/年 | 3,980円~ | 4,480円〜 | 500円 |
プロフェッショナルプラン | 96,960円~/年 | 8,080円~ | 9,280円〜 | 700円 |
エンタープライズプラン | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
「ジョブカン労務管理」は、1分で利用アカウントが発行できることから、即日で利用を開始できる導入ハードルの低さが特長の労務管理システムです。
労務管理以外にも、ワークフローや経費精算、採用管理や給与計算などのジョブカンシリーズ製品がリリースされており、シリーズ累計で導入社数が90,000社以上という実績があるため、安心して利用できます。
はじめてのシステム利用で不安な場合や設定する時間が確保できない場合は、初期設定代行のオプションも利用可能です。
中・小規模企業の場合は「無料プラン」と「有料プラン」が用意されており、大規模(従業員500名目安)の企業は問い合わせにより別途見積もりができる仕組みになっています。
どちらのプランであっても、初期費用とサポートは無料となっており、電話やメール、チャットでのサポートを受けられますが、無料プランでは機能が一部制限されます。
月額利用料 | 従業員数 | |
---|---|---|
無料プラン | 0円/ユーザー | 5名まで |
有料プラン | 400円/ユーザー | 無制限 |
すでに他のジョブカンシリーズを利用していた場合は、特別料金で利用できます。
「Direct HR」は、社会保険労務士業務支援システムで20年の実績がある「社労夢シリーズ」のノウハウが企業向けに展開された労務管理システムです。
入社退社時から転勤や結婚、産休育休、介護休業などの従業員のライフイベントを、電子申請まで簡単ナビゲートしてくれるため、複雑な手続きでも手順を追って迷わず処理できます。
従業員にはスマホやパソコンからいつでも申請してもらうことができ、そのデータをもとに書類作成・電子申請までが、Webだけであっという間に完了します。
DirectHRでは、利用人数に応じた月額費用が発生します。
初期費用や更新費用はかかりません。
利用人数 | 月額利用料 | 備考 |
---|---|---|
〜10名 | 0円 | 年末調整や電子申請、サポートは利用不可 |
11名〜500名 | 400名/ユーザー | 月々払い・請求書支払い(振込) |
501名〜 | 要問い合わせ | – |
「楽楽労務」は、人事データを基に入社手続きや退職手続きなどの必要な届出書が自動作成されるので、入力ミスなども防ぐことができます。
必要な手順は手続きごとにチェックリスト化され、担当者はメールの送付だけでOK。
従業員自身に入力や変更をおこなってもらうことで、手間のかかる転記作業や準備をおこなう必要はありません。
43,400社以上のクラウドサービス導入実績を誇る株式会社ラクスが開発したシステムだからこそ実現できる、強固なセキュリティとサポート体制、年数回のバージョンアップが特長です。
楽楽労務では、利用ユーザー数に応じて月額利用料が変動します。
初期費用+30,000円〜の月額利用料が必要で、具体的な利用料金は問い合わせが必要です。
従業員数 | 年間利用料 | 従業員1名あたりの月額利用料 |
---|---|---|
300名 | 約106万円 | 267円 |
「Bizer(バイザー)」は、総務・労務・経理などの幅広い業務をまとめて管理できるバックオフィスのプラットフォームクラウドサービスです。
登録された情報を基にタスクが自動でお知らせされ、手順はToDoリストでわかりやすく表示されるため、リストを進めるだけで業務が完了します。
Bizerの特長は、税理士や社会保険労務士、弁理士、司法書士や行政書士などの専門家へ気軽に無料相談できる点です。
オンラインで回答がもらえ、忙しいときや自分で対応できないときには役所手続きや書類作成の代行を依頼することも可能です。
1事業者1アカウントの契約で、月額2,980円~で利用できます。
ただし、最低利用期間は有料会員登録後3カ月と定められています。
「Gozal(ゴザル)」は、雇用・勤怠・給与・退職など、すべての労務管理やバックオフィス業務を自動化できるクラウドサービスです。
通信の暗号化やファイアウォール、サーバーの多重化や閲覧権限、セキュリティ専門家による第三者チェックなど、安心・安全のシステムが構築されています。
Gozalの特長は、労務に強い専門スタッフがヘルプデスクやメール・チャットで24時間サポートしてくれる点です。
労務管理が苦手な方や操作に不安がある方でも安心して利用できます。
Gozalでは、「月額プラン」と、年間一括払いで約15.7%の割引効果のある「年額プラン」が用意されています。
月額利用料 | |
---|---|
月額プラン | 700円/ユーザー |
年額プラン | 590円/ユーザー |
「jinjer(ジンジャー)労務」は、人事領域のデータを横断的にマネジメントできる国内初のプラットフォームクラウドシステムです。
スケジュールや必要な各種手続きのToDoリストで進捗や必要事項を可視化できるため、締め切りに気を遣う必要や手続き漏れから解放されます。
必要な機能がオールインワンで集約されており、労務管理に加え、勤怠管理や人事管理、採用管理やコンディション管理など、必要なシステムを組み合わせた利用が可能です。
データベースを1つにまとめることで、オペレーションの改善や従業員・企業データの活用が実現し、業績の改善やエンゲージメントの向上、離職率の低下につながります。
jinjerはシリーズ製品ごとに料金が異なり、従量課金制です。
労務管理単体での販売は不可となっており、複数のプロダクトを組み合わせて利用する必要があります。
jinjer労務単体では、1ユーザーあたり月額300円〜の料金プランです。
ARROWは、一般企業から飲食店・ホテルまで幅広く利用できる労務管理システムです。
給与明細から離職票までさまざまな帳票の出力に対応しており、手書きで書類を作成する手間やミスがなくなります。
クラウド上で従業員とデータのやりとりができるため、シフト管理や勤怠管理がスムーズになり、また給与も自動計算される仕組みになっています。
ICカードでのタイムカード打刻に加え、スマホやタブレットなどの各デバイスからも打刻可能。
労務手続きや経理処理、勤怠管理や経営管理の不満に対応できる、課題解決型のシステムソリューションです。
ARROWでは、10人以下の小規模事業者向けの「Aプラン」、中規模企業向けの「Bプラン」、あらゆる事業規模に幅広く対応しており全機能利用可能な「Cプラン」が用意されています。
ユーザー数ではなく店舗あたりの利用料金となっており、2店舗以上で同時に利用する場合、店舗数分の料金に加え、全店舗を統括する「本部」用の料金が別途必要です。
1店舗あたりの月額利用料 | 店舗数 | 店舗人数 | 店舗人数拡張 | データ保持 | データバックアップ | 賞与計算 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Aプラン | 1,980円~ | 1店舗 | ~10名 | × | 直近3年間 | × | × |
Bプラン | 3,980円~ | 無制限 | ~100名 | ○ | 直近3年間 | × | ○ |
Cプラン | 3,980円~※ | 無制限 | ~100名 | ○ | 直近8年間 | ○ | ○ |
キャンペーン価格で、通常は4,980円
別料金でオプション機能や独自カスタマイズの利用、打刻端末のレンタルも可能です。
働き方改革の一環として生産性の向上が求められる中、一部行政手続きの電子化が義務化されたこともあり、労務管理システムが注目を集めています。
各企業では、適切な労務管理をおこない、業務を効率化できるよう、システムの選定・導入を進めていく必要があります。