4月の主な業務
- 新入社員の入社手続き
- 人事異動
- 昇格・降格にともなう給与改定
- 36協定更新の手続き
働き方の多様化にともない、人事・労務に関する法律や企業で必要となる業務は日々変化しています。そのため人事・労務担当者は、必要な業務を滞りなく、かつ効率的におこなうために「年間スケジュール」を把握しておくことが大切です。
本記事では、人事・労務担当者の年間スケジュールについて解説します。
目次
企業によって人事・労務担当者の業務範囲はさまざまです。「人事管理業務」と「労務管理業務」で、担当者を分けている場合もあれば、両方担当している場合もあります。
人事・労務担当者の主な業務を「人事管理業務」と「労務管理業務」の2つに分けて解説します。
人事管理の主な業務は以下のとおりです。
人事管理業務は、採用や研修・教育にかかわる業務など「社員と直接的にかかわる業務」が主な業務です。
労務管理の主な業務は以下のとおりです。
労務管理業務は、給与計算や各種保険手続きなど「社員と間接的にかかわる業務」が主な業務です。
人事・労務担当者の年間スケジュールについて、月別に紹介します。
4月の主な業務は以下のとおりです。
4月の主な業務
新入社員の入社手続きでは主に以下のような作業が発生します。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)は資格取得(入社日)より5日以内に「被保険者資格取得届」を、事務センターまたは管轄の年金事務所へ提出する必要があります。雇用保険は、入社した日の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を管轄のハローワークに提出しなければなりません。
給与支給に必要な情報(口座情報など)を取得し、給与ソフトなどで登録をおこないます。また、入社日によっては、通勤手当も含めた日割り計算が必要となるため、初回の給与計算時は、注意が必要です。
新しく社員を採用する際は、雇用契約書と労働条件通知書の作成が必要です。後々、社員との労働トラブルを発生させないためにも、労働条件を明示したうえで、雇用契約書の承認を得るようにします。
人事異動をおこなう月は、企業によってさまざまですが、多くの企業では4月におこなっています。人事異動が発生した際は「労働者名簿」など、社員情報の更新を忘れずにおこないましょう。
昇格や降格にともない給与改定が発生する場合は、給与システムなどの情報を忘れずに更新します。
給与(基本給)は、基本的に毎月変動がある項目ではないため、更新すべきタイミングで更新が漏れていると、後々大きな問題となり、社員とのトラブルにつながるため注意しましょう。
企業によって更新日は異なりますが、4月1日を更新日としている場合、36協定の更新および届出の提出が必要です。届出の提出を怠ったまま社員に残業をさせると「労働基準法違反」として大きなトラブルにつながるため、忘れずに更新および届出をおこないましょう。
6月の主な業務は、以下のとおりです。
6月の主な業務
労働保険の年度更新手続きとは、年に一度、見込み給与額をもとに、労働保険(雇用保険と労働者災害保険)を算定し、納付をおこなうために必要となる作業です。原則、毎年6月1日から7月10日までの間に手続き・届出が必要とされています。
住民税は、前年の給与額をもとに、毎年6月1日〜翌年5月31日を1年として納付します。
毎年、各市区町村から5月末までに住民税の内訳に関する「特別徴収税額の決定通知書」が送られてくるため、通知書をもとに給与システムなどの税額更新が必要です。
企業は、毎年6月1日現在の高年齢者および障害者の雇用状況などを、管轄のハローワーク (一部地域では労働局)に報告することが義務づけられています。
高年齢者雇用状況報告書は常時20名以上※の社員を雇う企業、障害者雇用状況報告書は常時43.5名以上の社員を雇う企業が対象です。
東京労働局の場合
6月に賞与支給をおこなう場合、賞与計算および「被保険者賞与支払届」の作成が必要です。「被保険者賞与支払届」は、賞与支給日より5日以内に事務センターまたは管轄の年金事務所へ提出します。
7月の主な業務は以下のとおりです。
7月の主な業務
算定基礎届とは、社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)の標準報酬月額が、実際の給与と大きくかけ離れないように、年に1回見直し(算定)をおこなうための届出です。
算定基礎届は、毎年7月10日までに事務センターまたは、管轄の年金事務所に提出します。
随時改定(月額変更届)とは、4月昇給者がいる場合など、固定給与に変動があった場合に必要な届出です。4月〜6月の給与額をもとに作成し、事務センターまたは管轄の年金事務所に提出します。
8月の主な業務は以下のとおりです。
8月の主な業務
7月に「随時改定(月額変更届)」を提出した4月昇給者の社会保険料を改定します。
10月の主な業務は以下のとおりです。
10月の主な業務
7月におこなった「算定基礎届」の提出にもとづき見直された社会保険料の標準報酬月額は、9月分から支払いが適用されます。社員に新しい社会保険料の通知をおこなうとともに、給与システムの更新が必要です。
11月の主な業務は以下のとおりです。
11月の主な業務
被扶養者リストの確認とは、社員(被保険者)の扶養者が、健康保険の被扶養者要件を満たしているかを確認する作業です。被扶養者状況リストは、11月30日※までに全国健康保険協会に提出します。
令和4年の場合
12月の主な業務は以下のとおりです。
12月の主な業務
1年で最も時間と手間のかかる給与関連業務が年末調整です。年末調整では、1年間に支給した給与額をもとに、所得税などの過不足を精算するためにおこないます。
年末調整業務には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「給与所得者の保険料控除申告書」などさまざまな書類が必要です。社員の協力が必要な作業であるため、スムーズに業務が遂行できるよう、書類に不備があった場合も想定し、早めに取りかかりましょう。
また、年末調整業務と同時に「源泉徴収票」を発行し、社員に配付します。
12月に賞与支給をおこなう場合、6月と同様に、賞与計算および「被保険者賞与支払届」の作成が必要です。
1月の主な業務は以下のとおりです。
1月の主な業務
1月31日までに、管轄の税務署へ法定調書を提出します。
給与支払報告書は、社員が居住する市区町村に支給した給与額などを通知するための書類です。提出期限は、市区町村によって若干異なる場合もありますが、原則1月31日までとされています。
人事・労務担当者の業務は多岐にわたり、専門的な事項も多いため「未経験には難しい」といわれることもあります。人事・労務業務は未経験でも可能な業務ではありますが、さまざまなスキルが求められるでしょう。
人事・労務担当者には「正確性」や「集中力」が求められます。社員の給与や人事評価にかかわる業務が主な業務となる人事・労務担当者は、当たり前のことですが、給与額を間違えない正確性やミスをおこさない集中力が必要です。
また、社員の個人情報を扱う業務でもあるため、守秘義務を守れる責任感なども重要な要素となります。
社員の給与や、労働関連法にかかわる人事・労務業務では、ミスが発生した場合、社員とのトラブルや労働基準法違反などのトラブルに発展するリスクがあります。
多岐にわたる人事・労務業務を、効率的かつ正確におこなうためには「給与計算ソフト」や「労務管理システム」などの活用がおすすめです。管理ソフトを活用することで、毎月必要な業務の漏れを防ぎ、人為的ミスも発生しづらくなります。
人事・労務担当者は、年間を通して、多岐にわたる業務をこなさなければなりません。トラブルを防ぎ、効率よく業務をおこなうためには、「給与ソフト」や「労務管理ソフト」を活用しましょう。
労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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